コテンラジオ「資本主義」テーマ回備忘メモと所感②
今回のテーマの構成
- 第一回:イントロ・社会思想史の中での資本主義(記事リンク)
- 第二回:経済学の中での資本主義(本記事の対象)
- 第三回:ポスト資本主義で唱えられていること
- 第四回:コテンにおける捉え方、法人サポーターを募ることに関する捉え方
第2回 経済学における資本主義 の内容 備忘メモ
概観・経済学の流派
- 資本主義を経済学の観点から見たときにずっと論争されているポイント:「市場経済をどこまで自由に任せるべきか」
- 経済学には大きく4つの流派がある。どこまで政府が介入すべきかの議論をしている。
- 古典派経済学、新古典派経済学:
- 市場が自動調整機能を持つことに信頼を置く。政府が介入せず、市場に任せるべきという立場
- ケインズ経済学:
- 市場の調整だけでは不十分。国家が介入して調整をするべきという立場
- マルクス経済学:
- そもそも資本主義自体を否定。いずれ資本主義は崩壊する。
今回はこれらの考え方を抑えていく。マルクスは次回シリーズで。
①古典派経済学
- アダムスミスが唱えた重要なこと:市場経済を自由に任せておくと自動調整機能が働いて自動で調整されるはずという概念
- 市場経済という概念ができたのはここから
- 唱えた背景・ロジック
- この後出てくる「新自由主義」では、国の機能を最低限まで絞って市場経済を回した方が万事うまくいくと考え方がとられるが、アダムスミスはそこまで過激なことは言ってない。
②ケインズ経済学
- 1936年にケインズが「雇用、利子・お金の一般理論」を出版
- 市場の調整機能は実際には働かない。人間の行動にも不確実性がある。消費するだけではなく貯蓄したりする。
- 雇用・投資を高く保っていくためには政府の介入は不可欠
- アダムスミスの時代からの実際の動向も踏まえて提唱
- 国家が雇用を生み出し、消費させないとうまく回らない。金利変動も政府が介入していくべき
- ニューディール政策もこのケインズの考え方に則ったもの。大恐慌が起きたときにルーズベルト大統領がインフラを整え、雇用を確保しようとした(結果アメリカが力を持ち、第二次世界大戦に入る)
- 結果、国家の介入が戦後になってもサッチャーやレーガンが出てくるまで続く考え方になる。
③マルクス経済学
- 労働者が価値を生み出している、というところに着目する。
- 当時イギリスでは労働者がとても劣悪な環境にあった。→まずいのでは?
- 労働者は経営者に搾取されているので両者の経済格差は広がる、最終的に労働者が生活できないようになり、革命が起き、資本主義は壊れる。
- マルクスの唱えることに「労働者が価値を生み出す」「イノベーションが価値を生み出す」の二つがある。マルクスは前者を重視
- マルクス主義をもとに国を運営していた東側諸国は経済破綻するが、後者を軽視していたのではという分析がされている。
これらの経済学の思想からいろいろな考えが派生していく
- フリードリ・ヒハイエク
- ミルトン・フリードマン
- ポール・サミュエルソン
- ソースタイン・ヴェブレン
- そもそも資本主義とは?を考える人も出てきた。
- 1899年「有閑階級の議論」出版
- 資本主義の原動力は経済合理性ではない、見栄と羨望だけ。
- 富の象徴として消費をし、それによって尊敬を得たいという虚栄心でやっているのでは?
- 民主主義によって階級はなくなったが、結局消費によって顕示するヒエラルキーはある
- マックス・ウェーバー
- 社会学を作った人
- 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(深井さん曰くやべえ本)を出す
- 資本主義は合理的精神によって生まれていると考えられていたが、道徳的に金儲けが正しいという感覚はプロテスタントの信仰心から出ているのでは
- 禁欲的に労働しまくってたら道徳的にも正しい、という概念があり、それが資本主義の富を追及するところにつながっていった。
- 合理的に動いていれば、合理的に正しい説得をすれば市場が正しいふるまいをするはず、ただし、道徳的正しさに基づき労働しているのであれば、合理的に説得しても市場は動かない。実は市場は合理的ではない
- 宗教改革でも触れられている。カルバンが予定説を唱えたときに「自分の職業に従事しお金を儲け・ためることは最高の信仰心の顕れ」とされた。⇔それまではお金を儲けることは世俗的なことで評価されなかった。ここにパラダイムシフトが起きている
- 疑義も生じている(プロテスタントでない日本は?)
社会学の小ネタ
- 社会科学では説得できたやつがすごい。本当かどうかはさておき
- 提唱しているときの時代背景・社会構造が大きく影響している?
- 例えば国が介入しているときは逆の介入しないほうがいいというバイアスがかかる等。振り子構造
- 社会学で言われていることは大体嘘。議論に信頼を置きすぎるな。
「資本主義」の定義
- そもそも「資本主義」は資本主義批判の言葉。
- 資本主義に対抗する概念として「社会主義」が生まれる。社会主義からしたら対向概念・ダメな方として語られる。その時に初めて自分たちの社会を説明する言葉として「資本主義」が認識される。
- この構造は今同じことが起こっている。「ポスト資本主義」は「資本主義」に対するアンチテーゼとして出てきている。
- マルクスの定義
- 分業と貨幣経済を前提とする市場を資本主義の中心的要素に据える
- 資本の形成と持続的増加をする
- 生産手段を所有する資本家側の人たち、生産手段を持たない労働者側の人たちの緊張関係が存在している(現在、深井さん曰く絶対的な状態ではなくなっている。)
- 伝統的なものを解体しつつ世界に広がり、そのロジックを経済以外の生活のすべてに広げる能力とダイナミズムを所有する
- マックス・ウェーバーの定義
- 資本主義を長い歴史の時間軸でとらえる、また、工業化という時代から解き放つという特徴
- 資本主義的行為として「競争」「交換」「市場価格による行動決定」「資本の投下・投資」「利潤の追求」がある。
- これらの形式的かつ計算的な合理性というものを強調した。
- どゆこと・・・
- 資本主義下における経済行為・企業行為・モノの購買などは、基本的には予期されるリスクと利益と損失と、それをコントロールするという概念を含まなければ起こりえない。そしてコントロール可能と考えている
- (第一回目でこのコントロール可能、予測可能という考えは勘違い、と言っていたところ)
- 資本主義化における行動は、それまでの封建的社会におけるプライベートな家の活動と明確に分離されている。企業独自の組織の中にシステマティックに各個人が組み込まれている状態で、企業の合理的な活動をしていく体制下で行われている
- 企業内の合理性の追求を分業なり・協業なりで進めることは、経営者からの命令によって行われる
- (この企業とプライベートを分けるといった考え方も現代では変わってきている)
- シュンペーターの定義
- ユルゲンコッカの定義
- 資本主義の特徴3つ
①個人の個人の所有権と分権的決定(自分、自社のことを自分で決められる)を基礎としている
→民主主義と未分化であることを示している
②さまざまな経済的アクターの調整が市場と価格、競争と協働、需要と供給、商品の購入と販売を通じて行われている。
→商品化ということがその中心にある。
③経済行為の根本に資本があって、将来の利益追求のために現在の貯蓄と収益の再投資が行われている。(投資や借金が相当)
→時間が自分の外に出ている。どのように推移するか?財はどのように振る舞うかを踏まえて行動している。借金しても将来の利益になるなら借金する。
- 資本主義の特徴3つ
- 以上の多様な定義からまとめた資本主義の特徴が1回目に言ったもの。
- 市場経済がめちゃくちゃ大事、私的財産所有権も影響しており、資本主義の特徴であることは間違いない。
- 一見当たり前の事だが、そうじゃない時代から発達して今がある。(発達というのも実は近代人の考え)
- 次回は資本主義の課題を、ポスト資本主義がどう対応しようとしているのか?を話していく
所感
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今までの人々の経済を扱うにあたっての試行錯誤を知ることができた。
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どの思想も、時代に対応しようと当時の頭のいい人たちが考え抜いたものだと思う。その片鱗を感じ、現在の資本主義だけを知りのんびり生きている自分(や社会にも?)危機感を感じた。
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今回改めて資本主義は単なる制度ではない、と腹落ちした。政治や企業活動、人々の生き方・思想の総体だ。
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そして時代に合わせて資本主義は絶妙に姿を変え続けている。ポスト資本主義という話題が次回だが、一部を変えるレベルなのか、換骨奪胎するのか、完全な別物を目指すのかいろいろなパターンがありそう。
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「若年層は政治に興味がない、投票率も低い」とかっていうけど、それって「自分たちが生きる世界に興味がない、社会をどうしたいか意思を表示することをあきらめてる・できない」ってことなのかも。(あくまで極論。選びたい候補者や政党がないという意見もあるだろうし、逆に政策だけで資本主義社会全体がいきなり変わるわけでもない・・)
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ヴェブレンの「資本主義の原動力は経済合理性ではない、見栄と羨望だけ。」という考えには目からうろこ。
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同じく関連性を考えてしまったのがマックス・ウェーバーの「道徳的に金儲けが正しいという感覚はプロテスタントの信仰心から出ている」という箇所。
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自分はまずは他人に迷惑をかけず生きるために仕事をし、給料をもらっているが、本当の本心からそうなのか、今の社会の一般的とされる思想に染まってそうなっているのか・・と考えてしまう。
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本当の本心なんてなくて、成長するうえで一般的とされる思想を獲得してそうなってるだけなんだろうな。ただ社会の中で「一般的とされる思想」をある程度踏まえて行動しないと排斥されるという恐怖もある。
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恥ずかしながら、社会主義や共産主義は自分の中でアブナイ考え方的な扱いだったが、人類の試行錯誤の歴史・取組みの一つなのだと感じられてきている。こんなことにこの歳になるまで気づいてなかったなんて遅すぎたとも思う。
前回に引き続き激しく目からうろこが・・考えまとまらず、書き散らかし状態・・
とてもわかりやすいがコテンのお三方がたくさんの参考文献咀嚼してわかりやすい言葉で語っているからこそと思う。ありがたや。